【インタビュー事例】三井住友トラスト・アセットマネジメント様 社内ワークフローシステム構築

ワークフローシステムとして「intra-mart」を採用

年間約1万件に上る社内稟議のデジタル化を実現

【背景】
デジタルテクノロジーの活用による業務改革の一環として
紙ベースでのアナログな社内稟議の見直しに着手

 三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社(以下、SMTAM)は2010年代後半から、業務変革に伴うデジタルテクノロジー活用に向けた取り組みが加速。特に年間約1万件に上る社内稟議については、紙ベースでのアナログな稟議プロセスで運用されており、社員の業務効率化を阻害する要因となっていた。これらの課題を解決するため、SMTAMではIT推進部を中心にデジタル化を前提とした社内稟議の見直しが始まった。

【課題】
決裁リードタイムの長期化と社員の業務・心理的負荷が大きかった

 従来の稟議プロセスでは、申請・承認フローが滞留した際に、状況の把握や滞留原因の特定に時間がかかっていた。同社では海外出張も珍しくない中で10人以上の承認が必要な稟議も存在し、最終的な決裁までに数週間を要することもあった。IT推進部 IT推進 第2チーム チーフの山田 脩太郎氏は当時の状況について「期限は絶対に守らなければならない中で、申請書類を人手で回覧し、都度個別に押印依頼するという運用は、関係者にとって業務面・心理面での大きな負担になっていた」と振り返る。

 さらに、紙ベースであるが故に、書類紛失のリスクも常に抱えており、経営面での課題にも繋がっていた。

 こうした状況を受け、まずは稟議件数の多い商品開発業務部と投資業務推進部の2部署でのワークフローシステム導入を検討することになった。

IT推進部 IT推進第2チーム チーフ
山田 脩太郎 氏

【解決】
intra-martが持つ「機能性」と「信頼性」に加え
フォーカスシステムズによる「支援体制」を評価し intra-mart を導入

 ワークフローシステムの選定では、複数の製品を比較検討した結果、intra-martの採用を決めた。

 まず機能面では、複雑な承認ルートに対応できるかどうかが評価基準になった。山田氏は「当社の組織構造は複雑で、金額に基づくワークフローの分岐条件も多様。そうした要件に対応できる機能性の高さを重視した」と説明する。

 さらに、信頼性の高さも重要なポイントだった。「金融におけるITシステム導入には厳しい基準があり、そこをしっかりクリアできることが重要だった。intra-martはワークフロー領域における導入実績が豊富であり、市場シェアも高かったのでその信頼性を評価した」(山田氏)

 また、導入を主導したフォーカスシステムズ社による手厚いサポートが期待できたことも採用を後押しする結果になったと評価した。

 製品選定後は、まずは商品開発業務部と投資業務推進部の2部署でintra-martの導入を進めた。既存の複雑な稟議プロセスからシステム要件を抽出する作業は一筋縄ではいかなかったが、ユーザ部門を交えた組織横断的なプロジェクトチームを立ち上げることで両者がコミュニケーションを取りやすい体制を構築し、要件定義フェーズを乗り越えた。

 開発フェーズでは、承認の停滞を抑止するためのメール通知による承認リマインド機能や、ポータル画面上での承認依頼の一覧化、証跡管理機能などを重視した。「承認者が依頼に気づくようにしたいというのは大きな課題としてあったので、この機能にはこだわった。また、承認依頼を一覧化することで依頼の全容を把握しやすくすること、証跡管理機能により内部統制を強化することも意識した」(山田氏)

 また、年に1回~2回発生する組織改編や将来的な申請・承認フローの変更に柔軟に対応して運用できる仕組みを構築するために、適切なマスタ管理も徹底した。

【効果】
決裁リードタイムの大幅削減、コロナ禍にも対応できるリモートワーク環境の整備にも貢献

<導入効果一覧>

  • 決裁完了までのリードタイムを50%以上短縮(※) ※担当者による体感的数値
  • 100%アナログだった稟議プロセスのデジタル化
  • 決裁漏れや決裁の停滞を解消し、業務効率化に大きく貢献

 商品開発業務部と投資業務推進部では、2019年に最大利用者数600人という規模で社内ワークフローシステムを本稼働させた。100%アナログだった稟議プロセスをデジタル化しただけでも効果は大きく、稟議にかかる作業工数は低く見積もっても約10%削減できたという。IT推進部 IT推進第2チーム アシスタントチーフの長束 郁弥 氏は次のように説明する。

 「当初の狙い通り、決裁をもらうために承認者を社内で探し回ったりする手間はなくなり、決裁漏れや決裁の停滞も解消された。決裁者が海外出張している場合などは代理承認機能を使って稟議を進めることができるようになっており、体感的には決裁完了までのリードタイムが従来の半分以下になった。また、従来は紙ベースで保管されていたことで、過去の稟議を参照する際の検索の工数や管理コストが大きくなっていたが、intra-martの検索・複製機能を活用することで、稟議にかかる工数は各段に改善された。」

 在宅勤務で稟議申請や承認ができる環境が整ったことも、結果的に大きなメリットをもたらした。2020年に入り新型コロナウイルスのパンデミックが起こると、リモートワークの要請が高まり、稟議の電子化ニーズは加速した。商品開発業務部と投資業務推進部で先行して導入したintra-martに対する社内の評価が高かったことで、他部署にもintra-martを活用した申請・承認の電子化が拡大。例えば2023年には人事部門が福利厚生などの申請・承認フローをintra-mart上に整備した。「これまで人事部門の多くは出社していたが、これを機に在宅勤務が可能になった」(山田氏)という。

IT推進部 IT推進第2チーム アシスタントチーフ
長束 郁弥 氏

【未来】
稟議デジタル化100%への挑戦と生成AIを活用したさらなる生産性向上を目指す

 intra-martによるワークフローシステムは社内で定着しつつあり、現場から機能改善や機能拡充に関する要望も寄せられるようになっている。現在、社内の申請・承認フローの約80%はintra-martでデジタル化しているが、これをできるだけ早期に100%に近づける努力を続けていくという。

 目下進行中のプロジェクトとしては、コンプライアンス部のコンプライアンスチェックに関するワークフローの開発を進めている。長束氏は「intra-mart活用のノウハウを蓄積してきたことに加え、フォーカスシステムズには継続してサポートしてもらっており、開発は順調に進んでいる」と手応えを語る。

 また、新しいテクノロジーや新機能の活用も積極的に検討していく方針だ。特に生成AIには大いに注目しているという。「ワークフローをしっかり作成するとマニュアルも膨大になってしまうが、100ページのマニュアルをユーザーが読んでくれるかというと難しい。生成AIを活用して、必要な情報をユーザーに簡単に届けられる仕組みを構築するというのは、現実的かつ有効な使い方だと考えている。また、過去データの検索性をさらに高め、稟議の作成を支援するといった用途でも生成AIが威力を発揮するのではないかと期待している」(山田氏)

 ユーザーが事務作業に充てる時間を最大限抑制し、「本業」にリソースを重点的に投下できるようにするためのデジタル基盤として、intra-martへの期待は大きい。 

【最後に】
プロジェクトを終えて

 今回のプロジェクトにおけるフォーカスシステムズの印象について山田氏、長束氏は次のように述べた。

 「業務要件をintra-martのシステム要件に落とし込むところが一番大変であった。我々は業務側の要件をベンダに伝えることは出来るが、それをintra-martでどう実現するかという点でフォーカスシステムズさんにはご支援いただき、大変心強かった。さらに、画面モックを用いた認識の擦り合わせや汎用的な共通ロジックを活用した開発工数の削減など、当社側の意図を組んで開発を進めていただいた。」(山田氏/長束氏)

基本情報

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社

所在地:
東京都港区芝公園1-1-1 住友不動産御成門タワー

設立:
1986年11月

概要:
 三井住友トラストグループ傘下で投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業、商品投資顧問業を手がける。2018年10月に三井住友信託銀行の運用機能を統合し、アジア最大級の運用会社として多用な投資家のニーズに応える専門性の高いサービスを提供する。2024年3月末基準で資産運用残高は約94兆円に上り、特に確定拠出年金では大きなマーケットシェアを持つ。

URL:
https://www.smtam.jp/