「1988年設立(※持株会社体制への移行前)のレッグスは、CLホールディングスの原点です。成長プロセスにおいて、IPコンテンツと企業マーケティングをつなぐというビジネスモデルが生まれました。体験価値を求める『楽しい買い物』需要が拡大する中、コト需要やコト消費を創り出します。顧客接点となる店舗(売り場)も、コンビニエンスストア、外食チェーンやスーパーマーケットなど多種多様です。例えば、コンビニエンスストアでは、ゲームとのコラボレーションキャンペーンと物販を同時に展開しました。また、アニメの世界感をイメージしたテーマカフェも大変好評でした」
見込み型ビジネスは売上拡大、ビジネスの成長につながる一方、在庫増大という重要な問題に直面することになる。「IPコンテンツの活用では、ライセンス契約を結ぶ必要があります。当然、契約期間を過ぎれば関連グッズを販売できません。利益の最大化を図るためには、モノとお金の動きを把握することが必要です。当時、各営業チームは在庫に対する意識が非常に低い状態で、見込み型ビジネスを行っていました」(山下氏)
レッグスは、製販在の可視化と生産性向上を目的に「標準化」に取り組んだ。実現に向けて、業務プロセスをシンプル化し、業務をERPの機能に合わせる「Fit to Standard」という方針を立てた。パートナーとして提案力や伴走型サービスを評価していた、独立系SIerのフォーカスシステムズに相談。レッグスのシステム導入や運用の実績も豊富で、ERPの豊富な導入経験を有していることも採用の決め手となった。
フォーカスシステムズは、標準化のファーストステップとして複数の業務プロセスを集約するためにアセスメントを実施。フォーカスシステムズとレッグスの社内エンジニアは、各事業領域別に運用されていた23の業務プロセスを、ひとつひとつ洗い出した。「業務プロセスを図形化し、類似性の高い部分を探して5つに集約しました。各部門に対し、標準化の意義に関する丁寧な説明とともに、新システムで“困りごと”を解決するという姿勢を示すことで納得してもらいました」(米山氏)
「グローバルスタンダードで、当社の要件を満たしていたというのがベースです。また、所有から利用へ、クラウドサービスのメリットを活かすことで、運用負荷を軽減し、IT人材の戦略的活用の推進、使用分だけ支払うサブスクリプションモデルによるコスト最適化などが図れます。7年間の投資対効果を算出したところ、検討した複数製品の中でSAP S/4HANA Cloud Public Editionが最もコストメリットがありました。さらに、SAP ECC6.0からの移行に伴うコスト抑制やリスク回避もポイントとなりました」(米山氏)
2019年1月に、フォーカスシステムズの支援のもとSAP S/4HANA Cloud Public Editionを活用した新基幹システムの構築をスタート。ERP機能に業務を合わせることで「つくらないシステム」をテーマとした。カスタマイズの最小化により導入コストだけでなくバージョン更新時の改修コストを抑制できるからだ。また、構築期間も追加開発3カ月間を含め約9カ月という短期間構築を実現した。
追加開発では、ノーコードで業務アプリを開発できるkintone(キントーン)を活用し、営業の受注・引き合い管理ツールを作成した。営業活動が案件ベースで登録され、ステータスの一元管理を実現。営業部門の“困りごと”の解決に応えたものだ。
導入効果について「業務プロセスに関して、標準化された5つのパターンから選んで新規事業に適用していくという、システムの文化が根付いてきたと思います」と米山氏は話し、こう続ける。「モノとお金の動きを正確に把握可能となり、利益の最大化が図れました。さらに、倉庫や店舗に見込みの在庫がどれだけあるのか、モノの動きをトラッキングできるようなりました。契約期間が終了した返却商品数もわかるため、会計的にもスムーズに在庫の棚卸を行っています」
レッグスのSAP S/4HANA Cloud Public Editionによる成功モデルは、DX推進に向けてCLホールディングス、グループ会社へ展開。今後、海外進出する際も同じプラットフォームを利用できる。レッグスの代表取締役社長 山下氏は、新基幹システム導入の意義を経営観点から付け加える。
「CLホールディングスにおいて、グループのコアコンピタンスは、プラットフォーム(顧客接点となる売り場)展開力、商品&サービス品質力、デジタル活用力、IPコンテンツ調達力&展開力の4つです。それを支えているのが、人間力(理念型経営)とマネジメント力(経営マニュアル)です。今回、SAP S/4HANA Cloud Public Editionの導入により、コアコンピタンスを拡張する経営基盤を確立できました。グループ方針である『いくつもの強みを集結し、ひとつの強い集団へ。』の実現に寄与するものです」
エクス・テインメント市場を拡大し、売上収益1,000億円達成を目指すCLホールディングス。フォーカスシステムズはSAP S/4HANA Cloud Public Editionを通じて伴走型で同社の成長を支援していく。